夏の魔物対談 第5回 大森靖子×成田大致(With大内ライダー)

「夏の魔物」10回大会の開催を記念して、主催者・成田大致がタッグ・パートナーの大内ライダーと共にリスペクトしてやまない人物と対談をおこなう「夏の魔物10回記念対談」。今回のお相手は、2014年開催の「夏の魔物」に於けるベスト・アクトとして観客はもちろん、多くのアーティストからも称賛されている大森靖子。ユニット『夏の魔物』のメジャー・デビュー・シングル「どきめきライブ・ラリ」では作曲を手掛けている彼女から観たロックフェス「夏の魔物」とは?

取材・文 岡本貴之

―大森さんが「夏の魔物」に初出演したのは2012年ですが、どんな経緯で出演が決まったのでしょうか?

大森靖子:その当時、大内君がちょうど成田君にバンドに誘われている状況だったので、「夏の魔物に出演交渉できるよ」みたいな感じで言ってくれて(笑)。じゃあライダーのコネでどうにか出してよって言ってたんです(笑)。
成田大致:そうですね、あの頃はまだ大内さんと出会ったばかりで、大内さんとプロレスの話をしていたときに、大森さんの話になって。「もう是非!!!」って…。(唐突に)駄目だ、緊張する!ちょっと大内さん説明して!
大森:(笑)。私とライダーと、八十八カ所巡礼のマーガレット廣井の3人で、浅草の遊園地に行ったんです。でも私とマーガレットは絶叫マシンが怖いからライダーが高い所に登るのとかずっと見ているっていう会があって(笑)。そのときに「(夏の魔物に)出してよ~」って言った記憶があります。

―大森さんと成田さんが初めて会ったのは2012年の「夏の魔物」だったんでしょうか。

大森:フェスでは会ってはいないです(笑)。
成田:そうなんです。僕、大森さんのような女性がものすごく好きなので、接触を避けていました。
大森:ははははは!
成田:最初に話した時もはっきりと覚えてます!秋葉原の壊れかけのテープレコーダーズのライヴに行ったときで。
大森:ああ~。
成田:その時、大森さん本人から音源をいただいて…ドキドキしながら帰った覚えがあります…ちょっと大内さん、なんか言ってよ(笑)。
大内ライダー:どうしたの?今日なんか変じゃないの(笑)!?
成田:いや~今日緊張してるから!
大森:なんで緊張するの(笑)?

―大内さんは最初、成田さんに大森さんのことをなんて伝えてたんですか?

大内:「自分と一緒にバンドをやっている女性がいて、すごく良いから(夏の魔物に)出した方が良いよ」って勧めたんですよ。そしたらちょうど、その年の魔物の出番に空きがあるって。
大森:午前中の食堂のステージに出たんです。
成田:基本的にフェス当日はバタバタしていて、他のアーティストとかはほとんど観れないんですよ。でも僕の心のお気に入りリストに入ってる方なので、絶対観ようと思っていて、隠れながら観ていました。最後食堂ステージから外に出てきたときはこの距離(30cm)で観てましたから。

―大森さんはもともと「夏の魔物」のことは気になっていたんでしょうか。

大森:私、フェスとか全然詳しくないんですけど、色んな人がいっぱい出るフェスだよって聞いていて出たいと思っていて。でもそのとき、お金も全然なかったのでどうやって青森まで行けば良いかわからなくて。どうしよう?と思って。みみさんって女の子が「夏の魔物行く」ってツイッターに書いてたんですよ。でもみみさんだと思っていたのが、みぎさんっていうBiSのノンちゃんのヲタの男の人だったんですよ。それを知らずに、しかも集合時間の朝の7時を夜の7時と間違えていて、寝坊して待ち合わせ場所に行ったらみぎさんが連れた研究員集団がバーッといて。「ああ、間違えた」と思って(笑)。そこから、たくさんの研究員さんと一緒に青森に向かうことになるんですけど。
成田:そうでしたね。そのみぎさんから朝、僕に電話があって、「大森さんが来ません!」とか言われて。「えっなんの話!?」って(笑)。
大森:あははははは!
成田:ていうか、この電話くれてる人誰?って。
大内:そこから僕に電話が来て「知らない人が大森さんはまだ?って言ってる」って。僕もなんの話かわからなくて(笑)。
大森:それでライダーから私に電話が来て。「ああ、夜だと思ってた。青森ってそんなに遠いんだね」って(笑)。
大内:2012年だから、BiSの古参研究員の方がいっぱいいて。
大森:研究員の方が10人~20人いて。一緒に行ってお酒を飲んで。私はハロプロが好きなんですけど、その頃にはまだヲタクってことを言ってなくて。女子がアイドル好きってまだちょっと言いづらいみたいな感じだったんですよ。ももクロとかは流行ってたけど、ももクロを女子が好きって言うと、サブカルっぽい感じをまだ僻んでいた感じで(笑)。簡単に女子がアイドルを好きって今更言いやがってって思っていたので、言わないようにしてたんですけど、「ああ、この人も同じ類の人だ」っていうことが車で研究員さんと青森に向かっている10時間くらいの間に話すことがなくなるからバレて(笑)。そのときにヲタという人たちとちゃんと交流をしたら、普通に楽しかったんですよ。そうしたら、次の日のライヴのときに「IDOL」って書いた黒いTシャツの人たちが最前にバーッて座っててくれて。そのときは弾き語りで、「ミッドナイト清純異性交遊」みたいなトラックの曲とかもなかったし、こんなの見せて申し訳ないなって思ったんですけど、ちゃんと聴いてくれて。ふざけて握手会みたいなこともやってくれたりして。すごく楽しかったです(笑)。
成田:僕はそれを離れたところから観ていました。あの食堂の入口に行く度に、あの日のことを思い出しますね(しみじみ)。そういえば大森さんにレッドノーズに出てもらったのっていつでしたっけ。
大内:2014年の1月だね。
成田:なるほど。僕が一番ツラい時期がその頃だったんですけど。
大森:そうなんですか(笑)?
成田:あの冬に一番聴いていたのが大森さんのアルバムで、再生回数ナンバーワンでしたね。聴くことでいつも気持ちをアゲてたんです。その後の大森さんのリキッドルームワンマンライヴの日に、奥さんから「もう家族として接することができない」とメールが来て。ライヴの感想と一緒にそれをツイートしたら、吉田豪さんにリツイートされたということを覚えてます(苦笑)。
大森:(笑)。

―次に大森さんが「夏の魔物」に出演されたのが、昨年ですね。今回この対談連載に出て頂いた方からも、大槻ケンヂさんをはじめ大森さんのライヴを現場で観ていて、コカ・コーラの旗を持って山を駆け下りて登場したときのことをお話される方が多いんですよ。今年は、あの登場の仕方を真似したいという方もいましたし。

大森:ぜひ、やってください(笑)。
成田:昨年は、大森さんにあの時間に出てほしいというのがまず一番最初にあって。
大森:THA BLUE HERBの後にやったのを覚えてます。
大内:そうか、そのときもう準備してたもんね(笑)。
大森:うん。THA BLUE HERB聴きながら、(隠れながら)坂でこうやって(笑)。
一同:ははははは!
大森:そのときは、前夜祭で結構良いライヴが出来た感じがすごいあったんです。
成田:あのライヴも最高でしたね!
大森:めちゃくちゃ楽しかったんですよ、みんなの一体感がすごくて。あれを越えなければいけないというというのと、あと一日中渡辺淳之介と話していてちょっとテンションがおかしくなっていたのもあるんですけど(笑)。渡辺さんが、「俺結婚したいから、種付けを一生懸命やってる」とか、下品な話をバーベキューを食べながら2人でしていて(笑)。
大内:(笑)。
大森:それでもう、何が良くて何が悪いのかも良くわからなくなっていたのと、「夏の魔物」がどうこうじゃなくて、フェスというものに対して「名前を知られていないと本当に人が来てくれないんだ」って思ってて。「夏の魔物」の前日に出た「JOIN ALIVE」が、めっちゃ良いライヴが出来たんですけど、KANA-BOONとかぶってて全然人が来なかったんですよ。やっぱり悔しかったんで、「夏の魔物」ではとにかくここにいる人には全員に観てもらおうと思って。戦国武将って陣地を取るじゃないですか?そのイメージで、向こうにいる人にも目を向けてもらうように大きい物を持たなければいけないと思って。それでライダーに「あの旗ほしい!」って言ったのを覚えています(笑)。そしたらライダーがバ~って走っていって。
大内:一応、僕も運営側の人間じゃないですか?「PRのために旗を貸してください」とか適当なことを言って(笑)。
大森:言ってた!「コーラのPRになるので」って借りてきたって(笑)。
大内:「我々としても、コカ・コーラをPRさせて頂きたく思いまして」って。世界で一番有名な飲み物を(笑)。
一同:ははははは!
成田:いやあ、あの日のライヴは完璧でしたね。

―成田さんはその前のTHA BLUE HERBのライヴをPAから泣きながら観ていたんですよね。

成田:はい、号泣しながら観てました。
大森:すでにTHA BLUE HERBで号泣してたんですね(笑)。
成田:あの時間は携帯の電源を切って、PAの近くでひっそりと隠れてTHA BLUE HERBから大森さんをしっかりと観させて頂きました。あのライヴは誰がどう見ても一等賞という感じで。特大ホームランをかましてもらいました。
大森:景色が綺麗だったよね、ちょうど。日が暮れて行くんですよ、ライヴで。綺麗だったなあ。
大内:あのとき、マイクをリング四方に置いて歌ったのを、オーケンさんが絶賛してたよ。
大森:本当?ありがとうございます(笑)。

―リングの上で歌ったのは初めてだったんですか?

大森:初めてでした。アプガが使っているのを観ていて、彼女たちは慣れてると思うので「あの辺は踏んで良い場所だな」とか、「マイクは全部に置いた方が良いな」とか参考にしました。

―リング上だと歌いづらいという人もいるみたいですがいかがでしたか?

大森:もともと色んなところでやっているので、リングだからといって特にやりづらくはなかったです。でもリングはテンションがアガりますね。なんですかね、あれは(笑)。
成田:なんか、あの日は出演者同士の熱量が飛び火していく感じが「PRIDE」みたいでしたね。THA BLUE HERBや大森さんもそうだったんですけど、あの時間帯のステージはとんでもない異空間だったなと思いますね。自分がフェスをやる上で、その年の象徴みたいな感じのことを考えながら毎年やっているんですよ。以前なら毛皮のマリーズとか。去年は、大森靖子さん一択でしたね。圧倒的なライヴで感動しました。
大森:ありがとうございます。

―大森さんは「どきめきライブ・ラリ」を作曲していますが、成田さんは夏の魔物のメジャー・デビューが決まったときから、大森さんに作曲を依頼しようと決めていたんですか?

成田:そうですね。今年は10回の節目の年で、カンパニー松尾さんにドキュメントを撮ってもらっていたり、メジャー・デビューも決まったので、絶対大森さんに書いてもらおうと思っていまして。中野サンプラザで大森さんがライヴをやったときに「お願いします!」って直接言いました。
大森:だいたい作詞を頼まれるので、作曲だけは初めてですね。

―大森さんは『夏の魔物』メンバーの塚本舞さんと仲が良いことで知られていますね。

大森:もともと、コピバンライヴ(2014年9月2日新宿LOFT)の時に歌っているのを観て加入したんですよね?
成田:そうです。さきほどから言っているように、僕は大森さんのライヴによく行っていて。あのときビビビときて声をかけたんです。
大森:全バンドで私がボーカルをするという、銀杏BOYZとかハロプロとかのコピーバンドをやりまくるっていうライヴがあって。私、銀杏BOYZを1バンド目にしちゃって、いきなり声を潰しちゃったんですよ(笑)。それで歌えないから、舞ちゃんにハロプロのコピバンのときにいっぱい歌ってもらったんですよ。それを聴いて、舞ちゃんを誘ったってききました。

―大森さんは舞ちゃんにその話を聞いたときなんて言ったんですか?

大森:舞ちゃんがやりたいと思うならやれば良いと思うけど、そんなにギャラとかは良くないと思うよって(笑)。
成田:ガハハハハ!
大内:それは、その通りです(笑)。
成田:舞ちゃんとの出会いもそうですけど、僕ら『夏の魔物』が今のスタイル、水戸黄門みたいな形を築き上げれたのも大森さんと共演したのがきっかけで…
大森:水戸黄門みたいな形!?それは初めて聞きましたけど(笑)。
成田:あっ説明不足でしたね(笑)。ライヴのパッケージングの鉄板の流れが、という意味です。あれを初めてやったのも、大森さんと対バンしたときなんですよ。ピンチのときに「ミッドナイト~」で入ってきて頂いて、幽幻道士のテンテンの格好をして頂き、WWEのスーパースターのように登場してもらって最後合体技をして。ピンチになってスペシャルゲストが助けに来てくれるっていうあの形は、大森さんに参加してもらったときが初めてだったんですよ。
大森:へえ~、そうだったんだ!
成田:僕はその頃裏方に徹していてステージ上に出ていなかったんで、PA宅からその光景観ていて、やっとショーの理想形を初めて具現化できたというのをすごく覚えていますね。

―成田さんは大森さんのどんなところに魅力を感じているんですか?

成田:ライヴが百戦錬磨で素晴らしく、歌の力がすごいなと僕はいつも思っています。大森さんの感性に惹かれますね。例えばジャケット写真の佐内(正史)さんとか、MVの番場(秀一)監督とかの起用は大森さんのチョイスなんですか?
大森:番場さんは最初は違いますけど、でもやってみて良かったので2回目からはお願いしています。
成田:そういうところも含めて、いつも感性が素敵だなって憧れの対象として見ています。表現者としての理想形をやっていらっしゃると思うので。僕も大森さんのようになりたいなと思いながら活動しているんですが、まったく表れていないという(笑)。
大森:そういえば今日、じゅんじゅん(渡辺淳之介)のツイートで、「学園祭にタダで出ろとか舐めてんのか」みたいなことを言っていて、「お金が無いなら事務所までお願いにくるとかそういうのがないと」って書いてて。ああ、これをやったのが成田君だなあって思った。
成田:え、どういうことすか(笑)!?
大森:「そういう行動力はあるな、あの人は」と思って(笑)。
成田:ガハハハハ!
大森:結構人当たりの良い、カラっとした笑顔で来るじゃないですか?「いや~どうもどうも」みたいな(笑)。
成田:いや、好きな人にだけですよ。そういえば、大森さんの中野サンプラザ公演の時に奥野真哉さんにもご挨拶できて7、8年振りに会えたんたんですよ。あのとき、会場でも「満月の夕」流れてましたよね。
大森:(「夏の魔物」の)最初の方に出てたんですよね?
成田:ヨコヨコ(うつみようこ & YOKOLOCO BAND)で出ていただいたことが2回あって。でもいつかソウル・フラワーで出て欲しいとずっと思っていて。念願叶って今年出てくれます。
大森:なんか最初に出たときに酷い目にあったみたいな話をしてた(笑)。
成田:(苦笑)。最初の年に、奥野さんに出てもらったときとかは、会場に誰も出迎える人もいなくて。「次出番です!」って言う人もいなくて。勝手に察してくれて準備して出てくれて(笑)。
大内:ははははは!
成田:無法地帯ですよ!
一同:(爆笑)。

―主催者が「無法地帯ですよ!」って(笑)。

大内:ですよね(笑)。
大森:あはははは!

―出演者自身が、考えて行動しなきゃいけないという(笑)。

大森:こんなにっていうくらいに、何もしなくてもライヴの会場にたどり着くんですよ、フェスって。でも(「夏の魔物」は)絶対に辿り着かないじゃないですか(笑)?
成田:まあ、まずみんな「本当に開催するのか?」から始まりましたからね。
大森:あはははは!
大内:都市伝説みたいな(笑)。
成田:初回の年とかはアーティストの方から最初メールとか電話とか返ってこなかったのに、だんだん「JITTERIN'JINNも出るんでしょ?」みたいに急にレスが来るようになってどんどん出演者が決まって。「でも本当にあるのかなあ?」って当日まで言われてました(笑)。
大森:ははははは!本当にあるのかなあって(笑)。
大内:しかもいきなり青森県の奥地で(笑)。
大森:これ、何歳くらいに始めたんですか?
成田:18、19歳くらいですね。
大森:すごいね~!
大内:このメンツはすごいよね。

~ここで「どきめきライブ・ラリ」のMVを大森靖子に観てもらうことに~

成田:このMVは僕が初めて監督したんです。
大森:そうなんですか!?めっちゃ良いじゃないですか!良いですよこれ。ちゃんと成田君が前に出ていて。前はあんなに後ろにいたのに(笑)。前面に出ていて良いです。あと舞ちゃんが成田君を何も気にせずに同じくらい前に出ているのが良いなって(笑)。バランス良いですね。このメンバー最高です。良い顔してますね。
成田:(照笑)。ちなみにこの曲の歌詞は、「僕がもしも激情系の彼女と付き合ったら」みたいな感じで、僕の大切な方に作詞してもらったんです。そういえば、大森さんが以前、ブログで旦那さんが遊園地とかお花畑に連れていってくれるみたいなこと書いてましたよね。
大森:ああ、書いてましたね。
成田:そういう大森さんの旦那さんのような、ステキな気遣いとかが僕には全くできないので…(以下省略)。

―ご自分が作曲した曲としてはどうですか?

大森:アレンジは、成田君のイメージをアレンジャーの方に言ってもらえば良いから、私はとりあえず良いメロディを書こうという感じだったんで。こういう感じで良いと思います。
成田:大森さんの必殺メロディを頂き、《これはバンドサウンドでいきたい!》と思って。いつかバンドでやることを想定し、今回編曲の浅野尚志(SUPALOVE)さんにリクエストしたんですよ。ギターをマリーズの西さん(越川和磨)に弾いてもらって、キーボードはハジメタルさん。僕がロックバンドをやるんだったらこうしたいっていうのを詰め込みました。「夏の魔物」の舞台でいつかこのメンバーでできたらと夢見ています!

―今年はその「夏の魔物」に大森さんの出演はないわけですが。

大森:そうですね、ちょっと無理ですね(笑)。
成田:来年がありますよ!
大内:「夏の魔物2016」の開催がもう決まった(笑)。
成田:今年は10回記念、来年は10周年ですから。大森さんに日程合せます!
大森:私に合せてくれるんですか?じゃあしょうがないっすね(笑)。
成田:本当ですか?ぜひ出て欲しいのでよろしくお願いします!