2015年6月12日に加入して以来3年間、THE 夏の魔物の中心メンバーとして活躍してきた泉茉里。歴代女性メンバーで最も長く在籍し、現在のTHE 夏の魔物の楽曲、ライヴの方向性を決定づけた存在だが、9月9日(日)大阪・味園ユニバース『夏の魔物2018 in OSAKA』を最後にバンドを脱退することを発表した。多くのファンに惜しまれつつ、東京&大阪共にフェスの大トリでフィナーレを迎える彼女に、成田大致を交えて、3年間の活動を振り返りつつ、現在の心境、メンバーへの思いを語ってもらった。

インタビュー・文:岡本貴之

――先日、脱退に際してのメッセージが発表されて、ファンの人の声も届いていると思いますが、どんなことを感じましたか。

茉里:みなさん、マイナスじゃなくてポジティブに応援してくださっている感じで、「なんやねん!」みたいな声がなかったのはひと安心でした。むしろ9月9日の大阪・味園ユニバース『夏の魔物2018 in OSAKA』に向けて、みんな張り切ってくれているというか。それがわかって良かったなって思います。もともと、そこに向けてすごく気持ちを高めていたということもあったので、そこに向けてさらに頑張れるなっていう気持ちになりました。

――2015年6月12日に「ケンドー・チャン」として登場して以来、じつに3年間在籍していたわけですが、これは歴代の女性メンバーで最も長いんですよね。3年間、振り返ってみていかがですか。

茉里:振り返る暇もないくらい、あっという間に過ぎました。振り返ってたらきりがないくらい、色んなことがあったじゃないですか?だから、あんまり振り返らないようにしてました(笑)。

――じゃあ、この機会に改めて振り返ってみましょう。

茉里・成田:はい、わかりました。

――ところで、2人は普段からよく話していたんですか?

成田:あんまり喋らない(笑)。

茉里:3年間、変わらずにあんまり喋らなかったです(笑)。

――それは、茉里ちゃんが色々言わなくてもできた人だからじゃないんですか。

茉里:どうなんですかね?

成田:まあ、なんも言わなくてもっていうのはありましたね。

――話す必要がなかったということですか?

茉里:言いたいことはその場で言うので。自分がどうしたらいいかも、改めて長時間話さなきゃいけなくならないように、ちゃんとその場その場で聞いてました。

成田:とくに話さないといけないようなことがなかったから。でも逆にそれが良くなかったのかもしれない。

――こうなってから言うのはなんだけど、成田さんからすると「もっと色んなことを話せば良かった」っていう反省がある?

成田:まあ、ないと言ったら嘘になりますけど。自分の中でも、何も言ってこなかったこととか、もうちょっと悩んでいることとか考えていることを話せば良かったなって。それは、大内さんとの間でもそう思って。大内さんとも、最近まで1年半くらい腹を割って話してなかったんですよ。お互いに何があったとか、最近俺が何で悩んでいるとか。様々な問題があったんですけど。そういうことを、「メンバーなのになんで言ってこなかったんだろう」っていうのは、後悔してるんですよ。

――大内さんとは、かれこれ7年くらい一緒にやってるのに。

成田:これはヤバいなって、こうなってから気付いたというか(笑)。色んな問題を、俺は誰1人にも言ってこなかったので。それがすべてのミスだったなっていうのはちょっと思っていて。

茉里:ははははは(笑)。それはそうですね。

――それは、何を言ってこなかったんですか?

成田:何もかも。

茉里:何もかも。積み重ねてきてしまったんですよ。でも、その中には、もちろん言わなくてもいいこともあったと思うんです。でもそれを逆に言ってしまうこともあるし。「なんでそれ今言うの!?」みたいな。

成田:去年のフェス以降、俺の中で色々ありすぎたので。本当大変だったんですけど、そういう大変なことをメンバーに教えたくないし、なんやかんやある中で、メンバーはみんな「なんなんだろう?」って思いながら活動してたと思うんですよ。やみくもにライヴをやってるし、「突然何が始まったんだろう!?」みたいな。

茉里:大変なことを、隠しきれてたらいいですけど、出てるんですよ。

成田:(笑)。

茉里:それを察知しちゃうんですよ。私とかとくに、人より勘が良いので。そうなると、イライラしてくるんですよね。隠すなら隠しきれよ、と(笑)。出ちゃうならもう言っちゃった方がこっちもスッキリするし。それを変に隠そうとするからダメなんですよ。

成田:隠しごとと嘘がめちゃくちゃ下手なんで。

――それに対して、「何かあるなら言ってくださいよ」って言わないんですか。

茉里:言わないです、面倒くさいから(笑)。

――でも言った方がいいときもあるんじゃないですか。

茉里:ええ~、でも隠してピリピリしているときめっちゃ怖いから。なるべく近づきたくないっていう気持ちになっちゃう。

成田:いやでも、でもそういう状態だったのは最近だけで。

茉里:確かに、最近ひどかった。

成田:色々全部同時多発、みたいな。だけど、みんなに音楽に集中してほしいから環境を全部整えているわけだから、俺からしたらそれ以外のすごく大変なことがあったとしても、メンバーに共有しなくてもいいなって。そういうことは自分1人で考えていけばいいと思ってたんですけど、今考えると、もうちょっとそれも言えば良かったなって。どうせ外に出てたなら(笑)。

――ミーティングとかはやってるんですよね。

成田:いやでも、そういうことに関しては触れないので。次はこういうことをやるとかっていうのは、常に言ってます。ただ、その間に「なんでこうなったか」というのは言わないので。例えば、レコーディングするときにも、何のレコーディングをしているのかも言わないし。

茉里:うん、言わない。

――レコーディングって、いついつにこういう作品を出すからってスケジュールを組んでいくものじゃないんですか?

成田:俺らの場合は、出しどころが決まってないけど、レコーディングしたりして。でもずっとそれが続いてたもんね?

茉里:うん、それにずっとついて行ってたので。今更そんなに気にならないというか。

――2人でうつみようこさんにボイトレを受けに行ってたり、音楽制作については一致団結してやっていた印象ですけど。

成田:でも、前は詳しいところまではいかなかったよね?漠然と、「次はこういう曲やろう」とかはあるんですけど、例えばライヴの組み立て方とか、「この曲はこういう風に見せていこう」みたいなのも、各々の判断に任せていたというか。それはメンバー全員に言えることなんですけど。ただ、それをチャン(茉里)は整理してくれるというか。俺を筆頭に、みんなマイペースなので。

茉里:「これだったら上手くいかないんじゃないかな?」とか、実際にやったときのズレを考えられるかっていうのは、結構やっていかないとわからないものがあるから。そういう面で気付いたことは言おうとは思ってました。

――加入当初とはかなり音楽性とか衣装も変わって行きましたよね。そういう変化についても、とくに説明されてやっていたわけではないんですか。

茉里:流れに沿ってついて行った感じなので、聞いてはいないですね。

成田:俺の中では全部段階があるんですけど、その段階を言ってこなかったというのが、今思うともうちょっとやり方があったかなとは思います。ただ、一緒にヴォーカルレッスンを受けるようになって、音楽的に変わってきたんですよ。すべては、ようこさんのおかげなんですけど。曲やバンドの方向性とか、「みんなで作るには」っていうところに行けたのは、2人でレッスンを積み重ねていたときに、ようこさんに歌の部分じゃないところで色んなことを教えていただいたので。

――うつみさんは、茉里ちゃんが抜けることについてなんて言ってるんですか。

茉里:「お気張りやす!」って言われました(笑)。すごくこまめに連絡をくれるんです。「最近どう?成田がこんなん言うてたで」とか。成田さんが、うつみさんには言うのに私に言わないから、うつみさんが「なんか言われてんけど」みたいな感じで回してくるんですよ。

成田:ははははは(笑)。

茉里:私は、こっちに言いずらいのかな?みたいに思って。

――なんか不思議な関係ですね。密にコミュニケーションが取れているものだとばかり思ってました。

成田:そうですね。(茉里に向かって)取ればよかったね(笑)?

茉里:(笑) 私はライヴに関しては結構言ってましたよ?

成田:確かに、それは言ってたね。

茉里:この前のライヴこんな感じだったから、もうちょっとこうした方が良いんじゃないか、とか。自分的にはこうした方が動きやすいし、見栄えとかこうした方が良いんじゃないかとか。自分なりに思ったことは伝えてました。

――それは、音楽的に変化していくにつれて、そうなっていったということ?

成田:むしろ最初から言ってたよね?

茉里:うん、最初から言ってました。

成田:俺にとっては、ライヴを作る上でそれがものすごく新鮮だったんですよ。だから、今音楽的になれたのは、茉里と出会ったことによって魔物が変わって行ったところが大きいので。ライヴだけじゃなくて作品もそうなんですけど。一番最初のレコーディングのときもそうだし。今こういう風になれたのは、一緒にやれたからっていうのがあって。自分の中の気付きというか、音楽的な部分と、ようこさんのところに通ったことによってヴォーカルというものについて考えられたのは、確実にこの3年間のおかげです。

――歌も踊りも最初からスキルがあったという意味で、茉里ちゃんが魔物に持ち込んだ功績は大きいと思いますよ。

茉里:そうですか?

成田:はっきり覚えているのが、「どきめきライブ・ラリ」のレコーディングのときに、作詞の只野(菜摘)さんとチャンの歌録りを見ていて、「初めてスパイスとしてエモーショナルな歌の力が、曲に魂を吹き込んだ」っていう話をしていて。作品を作ってきた中でそういう出来事は初めてだったんです。そこから色んな曲をやっていって、「バイバイトレイン」のときもそうだし、どんどん表現できる幅が広がっていったんですよね。

――茉里ちゃんはとくに好きな曲ってどれですか?

茉里:好きな曲って訊かれたら、前から「リングの魔物」って答えてます。やっぱり、一番最初に歌ったのと、加入前に対バンしてたときから聴いてた曲で馴染みがあるから。愛着があるのは「リングの魔物」ですけど、それ以外の曲もどれも好きで、あんまり順番を付ける感じじゃないかなって。曲に関しては全然文句ないので(笑)。

――ライヴのセットリストを組むときに、「私はこの曲をここでやりたい」とか言ったりしないんですか。

茉里:全然。毎回いいねって思って歌ってますよ。「ああ、わかるわかる!」って。

――今回のフェスに関しても、そこは変わらずに?こうしたい、というイメージもあるんじゃないかと思いますが。

茉里:いや、魔物らしくできたらいいかなって思ってます。別に最後だからっていうこともまったくなくて。普通だったら卒業ライヴがあって、自分はこの歌を歌いたいっていうのはわかりますし、もちろんそれもないことはないんですけど、今回の味園に関しては魔物らしさっていうのと、そこに合わせて自分っていうものが見せられたらいいかなと思っていて。だから今回の味園を最後にしたのは、魔物らしさのピークをそこに持ってこれたらいいかなって。今までも好きな曲は散々やってきたので(笑)。ライヴもたくさんやってきたし、そのすべてに全力を捧げてやってきたから、そんなに後悔はなくて。「これを最後に歌いたい!」みたいなのはないです。全部良いときに歌ってきたし、その時々で良い思い出になっているので。

――こうして話を聞いてると、辞める人っていう感じが全くしないんですけど。

茉里:常に全力でやってるんですよ。たぶん、歌い切れてない、物足りないとか
後悔があると「この曲を歌いたい」っていうのがあると思うんです。魔物に関して1つ1つのライヴを全力でやり過ぎるくらいやったので。

成田:そうだよね。

茉里:ワンマンもそうだし、デカいイベントとかもあるじゃないですか?その時々に、「この曲、この日全力で歌えて良かった、最高!よし、終わり」みたいな。その日その日で終わって完結して次、はいまた次、っていう感じで、自分の中で1個1個の思い出が繋がってるので。だから別に「最後にこれ」っていうよりは、「今の魔物だからこれ」っていうものを見せられたらいいかなっていう感じがあります。

――全然、悔いがないからこそできるんですね。

茉里:失敗とかあれば、もう1回やりたいっていうこともあると思うんですけど、私失敗しないので(笑)。大きな失敗をしないように毎日頑張ってるし、自分で言うのもなんですけど、後悔しないように毎日生きてるし。毎回、常に「次はこれに向けて頑張ろう」っていう感じなので。

――こんな優秀なメンバーいないんじゃないですか。

成田:そうですよ(笑)。

茉里:そう言ってくれるだけで安心ですけどね。辞めた後に「あいつ~」とか言われたらどうしようって。だから真面目にやろうと思って。後々何か言われるの嫌だから一生懸命頑張ろうって。

成田:何言ってんの(笑)。

――決してこれで縁が切れる感じでもなさそうですよね。

成田:ないですね。

茉里:大阪に来たらライヴ観に行こうとか思いますけど。来ちゃだめとか言いそうだけど。

成田:そんなこと言わないよ!(笑)

茉里:そう言うけど、切り替えが早いから(笑)。

成田:いやいやいや!もう、上書きキャラみたいな誤解やイメージは終わりにしたいし、そもそも今後もうやらないみたいな曲もないし。いつでも戻ってきてくれたらいいと思ってるよ。

茉里:本当ですか?

――担当カラーの白を誰かが引き継ぐということでもない?

成田:もちろんないです。

茉里:まあでも一応、あんまり誰かが白を重ねてくるのはちょっとね。やっぱり、愛着を持って白をやってきたので。

――今後も、いつでも茉里ちゃんが戻ってこれる体制でいたい?

成田:それはもう、来週気が変わってもいいですよ(笑)。

茉里:本当ですか?大丈夫かな(笑)。そこに関してだけ怖いな~って最近思ってるから。

――でも、みずほちゃんだって抜けてからゼアゼアで対バンしたわけだし。昔とは違ってきたんじゃないですか。

茉里:ああそうか、確かに。安心しました。

成田:リード曲のPVに毎回出てくれてもいいよ。

茉里:あはははは。

――でも良いんじゃないですか、本当に。一応区切りはつけるけど、ときどき共演すれば。

成田:そうですよ、ファミリーです。

――味園では、最後に挨拶とかする予定なんですか。

茉里:ええっ!?しなくてもいいかなって。改めて「私は~」みたいなことはしなくていいかなって。

成田:らしくないもんね。俺もシェルターのワンマンが終わって「もう1本ライヴどう?」って訊いたんだけど、話してみたら違うかなって。さっきの曲の話じゃないですけど。

茉里:お涙頂戴みたいなのはいいかなって。「ハッピーに楽しんでいこうぜ~!」みたいにしたいです。大阪で、しかも味園ユニバースに出れるっていうことが自分の中で一番大きいし。ハッピーに終わりたいですよ。むしろ笑いで。

――暗転してから「茉里ちゃんやめへんで~」って戻ってくるとか?

茉里:まあ大阪だから、なんでもありかもしれないけど(笑)。ボリュームがすごいし、最後は鮎川誠さんとやったりとか、普通に自分のことよりもフェスを楽しむ感じがイメージできるので。

――「ROLLY& 大槻ケンヂと魔物少女達」もありますし。

茉里:ね?そうやってまたROLLYさん、大槻ケンヂさんと一緒にやれるのも嬉しいし。すごく楽しみです。そこは唯一、「やりたい」って強くお願いしたところなので。それができるのは満足です。こういうのって、魔物じゃなきゃできないじゃないですか?「自分が魔物にいた証」っていうか、コラボもそうだしフェスに出ることもそうだし。良い最後の舞台だなって。それに今回は2回ありますからね。

――大阪の前に東京がありますもんね。

茉里:まず2日に東京でベストを尽くして、9日に大阪で、東京とは違う自分のベストを尽くすっていう。なかなかないですよね、2週連続フェスに出てROLLYさん、大槻ケンヂさんとコラボして最後に鮎川さんと歌ってサヨナラするって。武道館でラストを終えるくらいの価値はあると思うんですよね。

――それだけ華やかな舞台があると、逆にそこでやめるのはもったいないとか思わない?

茉里:私も一応、卒業公演もやった方がいいのかなとか、めっちゃ考えたんですよ。でも、味園のライヴを越える盛り上がりを想像できないというか。そこにベストを尽くしたいっていう思いがあるので、その後だと脱力して何も考えられないと思うんですよね。

――卒業後の活動って考えてることはあるんですか。

茉里:いや、まったく考えてないです。一度実家に帰ろうかなって(笑)。魔物のために上京したというのもあるし、(音楽業界で)7年間、頑張りすぎちゃったなっていうのもあるので、次のことはゆっくり考えようと思って。大阪に帰るかもしれないし、そこも含めて未定ですね。

成田:お互い歌い続けてたら、クロスはしますよ。

茉里:そうそう、どこかでね。それはもちろん。

成田:活動してたら、毎年フェスにオファーもしたいし。

茉里:活動してたらね?みんなに次の活動について訊かれるんですけど、ちょっとそれはフェスが終わってからにしようぜって。ROLLYさん、オーケンさん、鮎川さんとやるのに他のこと考えてられないので(笑)。

成田:そりゃそうだよね。

茉里:もちろん、せっかくここまでやってきたし、歌うことに関してまだまだやりたいこともあるけど、焦る必要はないかなって。フェス以降にゆっくり考えようかなって。

成田:俺らはバンドなんで、止まったら終わりだと思っているから進んでいくんですけど、決して築き上げてきたものが崩れるわけじゃないし、お互いが走っていく中で、またやりたくなったらいつでもやろうぜって、それだけですよ。

――こういうグループって他にないし、またやりたくなるときは来るかもしれないですよね。楽しいことも苦しいこともあったかもしれないけど。

茉里:苦しいことって、あんまりなかったですよ。「当たり前に大変」というか。そりゃこんな規模でやってたら大変だよねっていう。そういう気持ちでしたね。でも何事も楽しめる力はあるので、楽しいとは思ってましたよ。もちろん、みんながやってきてこと、見てきたもの、育ってきたものもまったく違うし、自分の気持ちの中で戸惑いもあったし、そこにぶつかったときに自分がどうしたらいいのかっていうのは未知の世界なわけで。自分をどう変えて行ったらいいのかっていうのはいっぱい考えたけど、それがつらいっていうことではなかったです。「大変だなあ」っていう感じなだけで。

―― 一番、戸惑ったのは?

茉里:バンドの演奏の違いは感じましたね。私が昔ライヴでやってきた生バンドとはジャンルも違うし、音の違いや音楽性も違うし、そこに入ったときに自分がどうしたらいいかっていう悩みはもちろんありました。でも自分が絶対できないとは思っていなかったし、うつみさんとか色んな人に助けてもらって今があるから。だからつらかったな、とは思わなかったです。

成田:本当に大変で、めちゃくちゃ頑張ってたと思う。俺は、活動していて初めて焦ったことがあって。本人は覚えているかわからないけど、ようこさんのボイトレの帰りに2人で帰ってたときに「私が思うバンドとは違います」みたいなことを言われて、「これはまずい!」と思って。それで、初めて「メシ行って話そう」って言ったんですよ。

茉里:なんか、「ヤバい!」って感じたんですよね。みんなはわかってるだろうけど、私はわかってないかもしれないみたいな気持ちがあって。上手く説明できないんですけど。私が思っている自分のイメージと、みんなが思ってるイメージのズレというか。「違うかもしれない、どうしよう」って、ピークで焦ってました。

成田:去年のフェスが終わって、俺がカオス状態になるちょっと前だよね。まだもうちょっと余裕があったけど(笑)。

茉里:新宿JAMでのフロアライヴもそうだし、その場に自分で立ってみて感じたことの重み、みたいなものがドーンときちゃって。それは上手く言葉にできないんですけど、とりあえずこの今の気持ちをなんとかしてわかってもらいたいと思って、バーっと伝えたんです。今となっては、どういうことを言ったのか忘れちゃいましたけど。

成田:JAMのフロアライヴが終わって、色々なことが変わってきたんですよ。言葉では何とも言えないんだけど…

茉里:音が変わったというか、色んなものの見せ方、やり方、魔物の在り方みたいなものがガラっと変わったときに、自分だけ半周置いて行かれちゃったような気がして。でもそれが、できないとかみんなに置いて行かれてるとかっていうんじゃなくて、今自分が良いと思ってやってるものと、みんながやってるものの間にあるデカい壁が自分の中にあって。言葉で伝えるのは難しいんですけど。

成田:概念の問題だもんね。

茉里:それで、自分の中でどう自分の気持ちを伝えたらいいかわからないから、色んな人の例えを出して成田さんに伝えたんですよ。例えば、「このアーティストみたいなものは観てこなかったからわからない」とか話して。どうにかしてでも自分を変えたいから。どうしたらいいのか、変え方がわからなかったんですよね。

――それで、その後に2人でご飯を食べに行って話し合ったんですか?

成田:いや、結局メシ行けなかったんですよ。何度誘っても断られたから(笑)。

茉里:行かなかったです。そのときは、頑張ってうつみさんとか色んな人に会いに行って自分の知らない世界の話を聞いて、自分なりに作り上げていっちゃって。だから成田さんに「自分はこう思ってるんだ!」って言うだけ言って、聞かなかったんです。「自分でなんとかする」って(笑)。

成田:たぶん、俺と2人で話すってことは最終手段だったんですよ。「話さなくても大丈夫」っていう感じが、そこでも悪影響を与えてるんですよね。あのとき無理やりでも行けばよかった。

茉里:他の人とはいっぱい行ったんですけど(笑)。

――そこがターニングポイントだったのかもしれないですね。「メシを断った」という。

茉里:ははははは(笑)。

成田:あそこでもうちょっと腹を割って話してたら、違ったかもしれないし。それはifの話だからしょうがないけど。俺ももっと教えられることがあったかもしれない。

茉里:でも、すごくライヴに誘ってくれるようになったので、何かを伝えたいんだろうなっていうのは、私なりに感じてました。「たぶんこれを観て何か伝えたいんだろうな」って。

――そこで答えが見つかったりしたんですか。

茉里:答えとかってわからないじゃないですか?それでどうしたらいいのか戸惑っていたので。今までは、自分の中でイメージして「こういう自分になりたい」って思ってやってきたんですけど、魔物の中での自分のイメージっていうのもあったんだけど、それを突然見失っちゃったから、自分なりに探しても正解がなくて。だから、探り探りで今年はずーっとやり続けていて。大変ではあったけど、その中で自分なりには見つけてここまでは来たかなって思ってます。

成田:「正解がないものをやってる」わけだから、そういうもんだっていうことを説明すれば良かった。でも、俺も例え方もわからなかったんで。言われてものすごく動揺した(笑)。こっちはもう、チャンはできてると思ってるから。できる前提で全部話してたから。

茉里:言われたことは、できるんですよね。でもその中でもやってることの意味を見つけたいんですよ。「これはこういう意味でこうやってる」っていう、理由が欲しかったんですよ。でも、そういうものって見ただけじゃわからないものじゃないですか?だから、その理由をすごく見つけたかったんですよね。たぶん、先月大阪に遠征したときに貸してくれた漫画に、そういうことが書いてあったと思うんですよ。

成田:そうそうそう!

――『BLUE GIANT』ですか?

茉里:そうです。「それ、去年貸してくれよ!」って。

成田:(苦笑)。

茉里:「えっ今!?」みたいな。「自分は自分で今のTHE 夏の魔物を完結させていきたい」って思ってる時期に貸してもらったから、「なんでこれ、もっと前に貸せなかったんだろう?」っていうのは、ずっとこの1ヶ月くらい思ってました。今やっと言えました。

成田:そういえばあの漫画に全部詰まってるなって思ったから貸したんだけど…(笑)。

茉里:でも、ひどいんですよ! PV撮影の後でめっちゃ荷物持ってるのに、分厚い漫画を10何巻も渡されて。しかも大阪遠征の3日前に「大阪に行く前に全部読んで」って言われて。大阪に行くまで会わないのに、いつ返せばいいんだよって(笑)。だから、大阪に全部持って行って、新幹線の中で1巻からず~っと読んで、ライヴが始まる朝まで読んでたんですよ。

成田:(苦笑)。

――それで、読んでどう思ったのか話したんですか?

成田・茉里:話してない。

――なんで(笑)。

成田:今、初めて話しました。まあ今聞いてもっと早く貸せば良かったなって。

――普通、返してもらうときに「どうだった?」とか訊くじゃないですか?自分から貸したんだし。

成田:なんとなく感じてくれたらいいなって思ってたから。

茉里:それは感じたんですよ。伝えたいことはなんとなく「ああ、なるほどな」って。主人公が成長する上で悩んでいることとか、色んな人に言われていることっていうことに色々感じて、良い漫画だなって思ったんですよ。読んだ結果思ったのが、「もっと早く貸してくれよ」(笑)。「なんで今やねん?」みたいな。

成田:(笑)。

茉里:「そういうとこやなあ」って(笑)。でも、この3年で色んな良いものを見せてもらったし、普通に生きてたら出会わなかった人たちとかものとか、環境と出会えたし、それは刺激になりましたね。

――そういえば、喧嘩したことってないんですか?

茉里:ないですね。まあ、今回に関しては1回バーっと言い合った瞬間はありましたけど。でも、別に喧嘩するようなことなんてないですよ。逆に、怒るようなことがあったら言ってっていうくらいで。3年前に誘ってもらったときから、私というものを見てくれて夏の魔物に誘ってくれたと思ってるし、そこは自分というブランド力を持ってしっかりやらなきゃダメだなって、自信を持ってやってきました。

成田:まあ、怒ってこなかったこともダメだったのかもしれない(笑)。唯一、怒ったことがあったのはU.F.O. CLUBでやったときかもしれない。なんやかんやあったとき。

茉里:私の中の信念ってあるんですよ。ステージに立った瞬間に、やっちゃいけないこと、やりたくないことってあるんです。お客さんに対して、自分たちがどんな状態でも、言葉にしちゃいけないキーワードみたいなものが自分の中にいくつかあって。それはまわりの人間にも発してほしくないし。あのときは、同じステージに立っている人間として言って欲しくない言葉を言われて、我慢できなくて。今までやってきたプライドもあるし、それは自分の中で曲げられなくて。でもそれをどう伝えていいかわからないし、自分が1人で思ってたことだし、人に強要するようなことでもないんだけど、突然のことだったから。

成田:要は、上手く全員がコミュニケーション出来てたら良かったんですけど、去年のフェス以降、俺が変になってて余裕がなかったから、起こっちゃったことなんですよ、全部。俺の悪い部分が全員に伝染した感じでというか。

茉里:ははははは(笑)。

――フェスについて一番思い出深いことってどんなことがありますか?

茉里:加入した初年度の2015年のフェスに、青森までみんなで車で行ったんですよ。台風の中、怖い思いをしながら10何時間かけて行ったことですね。大変だったけど、めっちゃ楽しかったんですよ。集団行動の大変さをそこで知ったし、(会場となっていた夜越山スキー場の)コテージに泊まってみんなでベッドの取り合いをしたり、大変だけど楽しかったですね。自分の理想とする魔物のイメージがそのコテージに詰まってた感じでした。

成田:思い出に残ってるフェスのライヴは?

茉里:色々ありすぎて、ピックアップするのが大変。フェスの自分たちのステージは必死過ぎて、あんまり記憶にないんですよね。

成田:2016年のときは、俺が本番のときにチャンに向かって「あ、俺今日ダメだ」って言ったんだよね(笑)。

茉里:「今日ダメだ」って突然言われたんですよね。こっちもこっちでダメなことはたくさんあって。るびいが初めてのフェス出演だったし、クロユリ(クロユリ from 夏の魔物)もいたし、初めての子たちをみんな私が引率したり指示したりしていて大変なのに、成田さんに「ダメだ、できない」とか言われて、「ハア!?」って思ったというのはありました。

成田:朝からバタバタで調子悪くて声が出なかったんです。ステージ上で突然言ったんですけど…(笑)。

茉里:私、その日終わってから夜中にコテージで全員にブチ切れましたもん。「フェスで最高のステージ作るんじゃなかったの!?みんな準備足らなすぎだし、やれてなさすぎ」って。あのときは、誰1人としてフォローできなかったですもん。まず練習しろ、準備してこい、(成田を指して)体調整えろ、すべてのことをまず自分たちのことができてからやれよって。加入して2年目のフェスして思いましたね。

成田:今音楽的になってきたのは、奇跡ですよ。絶対、あのときの躓きがあったからできてるんです。本当にあれはヤバかった。色んなことが分かれて行ったのは、あそこからな気がする。

茉里:でも、私はあの日調子良かったんですよ。

成田:そうそう、1人だけ調子良かった。

――バンドでのライヴがあんまり上手くいかなかったというのは聞いてましたけど、それだけじゃなかったんだ。

茉里:全然、それだけじゃないですよ。

成田:みんなは思い出作りで良かったかもしれないけど、やっぱりこっちはそうじゃないからね。

茉里:その日に合わせて真剣に準備している自分との気持ちのズレみたいなものを感じて、「みんなにも真剣にやってほしい」っていう気持ちにそこで初めてなって、魔物で私ができることを考えるきっかけにはなりましたけどね。自分がどう発言して行動すればみんなが変わってくれるのかなって。まあそれも良い思い出ですね(笑)。

成田:俺もそうですよ。フェス主催者から、音楽をやろうって変わって行ったのは、あの躓きがめちゃデカいです。

茉里:去年の川崎のライヴは完璧でしたけどね。「楽しかった!」っていう感じだけですね。

――ケンドー・チャンとしてマスクを被っていた時期もありましたね。

茉里:マスクね~、好きだったんですけどね。ライダースと一緒に家に置いてます。

成田:今回、急に「さよならメモリー」のPVを撮ることになって、竹内(道宏)さんにお願いしたんですけど、その中で本当は、過去の映像とか写真とかマスクも含めて色んなことができれば良かったんですけど、時間も予算もなかったり、俺らは移籍もしているから許諾が取れないとかあって。でも、PVのイントロで、チャンが1人でコーラスをしているところがあるんですけど、そこで観た人が各々思い出してくれれば良いなって思ってます。

茉里:竹内さんとやったのは4年ぶりです。大好きな人たちが最後に協力をしてくれるっていうのは、嬉しいですね。

――レコーディングの思い出も教えてもらえますか。

茉里:やっぱり、「バイバイトレイン」ですね。一番緊張したし不安もあって。「この声、出る?」って。今までの無理だと思ってた自分の限界を越えた1つのきっかけでもあるなって思ってます。すごく思い出があるレコーディングですね。自分が歌う前に、ウエノ(コウジ)さんとクハラ(カズユキ)さんがレコーディングしている姿をいちから見てたんですよ。そこからのレコーディングだったので、より深みが出たというか。

成田:普通、リズム録りのレコーディングって呼ばないんですけど、そのまま歌入れが出来ればなと思って。

茉里:あんな経験はなかなかできないので良かったなって。それまでは、色んな音が出来上がった中で歌入れをしてましたけど、「バイバイトレイン」からはよりそぎ落としたバンドサウンドで、生音っていうものを感じながらのレコーディングだったので、自分の中でも刺激になりましたね。

成田:今のスタイルになって行ったのは、「バイバイトレイン」が全部のきっかけだし、自分が作る音楽でそういうものを作ることはもうないだろうなって思ってたんですけど、あのときのレコーディングで、やれることはまだまだあるなって思ったんですよね。

茉里:あと、魔物のPV撮影はどれもヤバかったなって。一番最初に撮った「恋愛至上主義サマーエブリデイ」も、真夏にライダースを着て、小道具が多すぎるしカット数も多すぎて、今やってることもわからない、みたいな。本当にパニック状態でやってました。「東京妄想フォーエバーヤング」は寒くて大変だったし、「魔物、BOM-BA-YE ~魂ノ覚醒編~」は夜中の3時までやっていたり。作品への情熱は感じたんですけど、「負担がデカい!」みたいな(笑)。そういう意味だと、今回の「さよならメモリー」は一番シンプルかもしれないですね。

成田:それくらい、キャニオン期の曲って、多種多様な音楽性だったと思うんですよ。カラフル感じというか。最近、アルバムを聴き返してみたんですけど、あれはもう行きつくところまで行っててやることないなって正直思いました。Vapから出したアルバムもすごく良いものが出来ていて。本当はその次も一緒に見せられたら良かったんだけどね。それくらい、作品1つ1つに思い入れがあります。

茉里:そうなんですよ。だから、私がTHE 夏の魔物でやれることは全部できたなっていう気持ちはあります。すべての曲に対してやり切った気持ちです。毎回ベストは尽くしたかなって。PVにも歌にも、どんな状況にもベストを尽くしてきたっていう自信を持って、最後を迎えたいと思います。

――メンバーについて、一言ずつもらってもいいですか。

茉里:私、人見知りとかではないんですけど、あんまり上手く自分から話しに行けないんですよね。自分から腹を割って話したりできなかったので、そこはちょっと後悔していて。もっと踏み込んでメンバー1人1人と色んな話をすれば良かったなって。とくにバンドのメンバーさんに対しては、そう思っていて。やっぱりみなさんプロだし、変に気を遣っちゃったんですよね。もっと話ができれば良かったなって、今になってリハに入るたびに思ってます。とくに西さんは、当初から「もっとコミュニケーション取っていこうや!」って、気にしてくれて話を聞いてくれたりしていたんですよ。一番ぶっちゃけた話をしてたはずなんですけど、それでもまだ踏み切れてない壁みたいなものが自分にあったので、そこを壊していけたら良かったなっていう後悔はあります。もっとみんなとコミュニケーションを取りたかったっていう、それだけが心残りなので、残りの時間でたくさん話せたらいいなって。

アントンさんは、何も変わらず常に「ありがとう」っていう、心の支えになってくれていた感じです。アントンさんがいるから大丈夫っていう気持ちになれる存在でした。それは3年間まったく変わらなかったです。本当に感謝の気持ちしかないですね。

るびいは、以前のインタビューでも言いましたけど、入ったときから「わからない、不思議」っていうことをずっと思っていて。これまでも色んな女の子と出会ってきましたけど、群を抜いて一番、出会ったことのない子でした。あまりにも個性的すぎて。だから、どう接してどう話したらいいか本当にわからなくて。たぶん、るびいも私とどう話したらいいか悩んだと思うんですよ。お互い言わないからこそ、るびいの気の遣い方とか人に対する接し方っていうのにも、気付いてあげられなかったなって。だからもうちょっと踏み込んで話をした方が良かったなとは思ってます。まあ、THE 夏の魔物って、不器用なやつの集まりだなって(笑)。

大内さんは、信頼しすぎているというか、友を越えた親戚みたいなもので。大内さんがいなかったら、たぶん私はここまでやってないってくらい、頼っていたし。悩んでいるときも助けられたなっていう感謝の気持ちがありますね。でも、人のためだけじゃなくて、これからは自分が今どうしたいかっていうことも考えて、もうちょっと強がらないで気楽にやってほしいなって思うし、自分のことをないがしろにせずに幸せになってほしいですね。きっとこれからも腐れ縁で会うこともあると思うけど(笑)。

成田さんについては、色んな無茶ぶりやら突発的な行動に対応はしてきましたけど、最後の最後まで迷惑をかける男だなと思いました(笑)。でも、縁を切るようなことを私はしたくないし、今回私が辞めるっていうことを真摯に受け止めて、これからやっていくメンバーたちに対して向き合ってやって行ってほしいと思います。私が、自分の身を持って成田さんに伝えたかったのは、「THE 夏の魔物を辞める」っていう決断だったんですよね。その決断を、成田さんにわかってもらいたかったというか。それが本当に、最大限の表現だったし、私から成田さんへのメッセージなんですよ。

私はTHE 夏の魔物に自分の人生を懸けて、未知の世界で挑戦してきたので、それだけの重みを持ってやってきた人間が、1つのことを辞めるということの重要さを、ひしひしと感じて欲しいと思っていて。だから、私は最後まで全力でやるし、私がいた意味っていうものをもうちょっと感じてもらえるように、自分自身も頑張ろうって思っているんです。お互い次に向かって進んでいくからこそ、今後悔したくないっていうか。私が辞めることに向き合ってほしいと思うし、私も自分と向き合って次に進んでいくし。喧嘩したからとか揉めたからとかじゃなくて、3年間っていう長い長い期間をすごくいっぱい考えた上での結果だから、簡単なものじゃないんだよっていうことを伝えたいです。私は直接言葉では伝えられなくて、行動で示したいタイプだから、成田さんにグループに入れてもらったっていう恩と、それにプラスして、自分が入ったことによってこれだけできたっていう自信になるように、私も一生懸命に真剣に頑張ってきたんだから、そのことを思い出してほしいというか、ないがしろにしないでほしいなって思います。悩んだことも、真剣にやっていたからこそだから。「もうちょっと早く言えばよかった」って後悔したって言ってたけど、「そうだね、後悔してくれ」って思いました(笑)。

――最後に、魔物チルドレンのみなさんへのメッセージをお願いします。

茉里:ファンの人たちは、本当に大好きなんですよ。みんなのこと愛してます。私には、みんなからの“好き”が伝わりすぎていて。それを返すのはすべてライヴなので、残されたライヴを観に来てください。今年のフェスは大トリで、これまでで最高のライヴを見せたいと思ってます。