夏の魔物10周年記念対談特別編 吉田豪×ケンドー・チャン

――いきなりですけど、ボクのことをすごい警戒してると思うんですよ。
チャン うん、してます(キッパリ)。昔から。
――いつもタイミングが悪いんですよね。いろいろややこしいことがある時期に限って、ボクと仕事で絡むことになったり。
チャン そうそう、本当にタイミングが悪い!
――ややこしいことがあった直後にどこかでバッタリ会ったりとか。
チャン そう! そんなときに限って会うんですよね。プラニメのときもTパレットレコードの感謝祭で、タワーレコードの嶺脇(育夫)社長とふたりで(カミヤ)サキちゃんにBiSの話を聞いたり(笑)。
――あのときは2人とも地雷があった感じでしたよね。
チャン べつに私は地雷ではなかったです けど、サキちゃんがなぜかあのとき「BiSの話はしたくない」みたいにこだわってて。そういうときに、「ああ……聞いちゃった」と思って(笑)。
――ボクも仕事だから、いろいろややこしいことも聞かなきゃいけなくて、そのせいで嫌な顔されるっていうパターンが何度もあったんですよね。
チャン フフフフ、何度もありました(笑)。でも、いまは大丈夫です。
――映画『世界の終わりのいずこねこ』公開時のトークショーときもそうでしたよ。いずこねこの映画についてサクライケンタさんと話すってことだったから、「いずこねこの話をするのは今日で最後です」って前置きでサクライさんからいろんな話を聞き出して。
チャン らしいですね、それも全然知らなくて。一切情報入ってなか ったから、2年後ぐらいに初めて聞いたんですよ。
――当時はサクライさんと共演できるようになるとは思えないぐらいだったから、わかんないもんですよね、世の中。
チャン たしかにそうですね。私も(サクライさんの)病気が治ると思ってなくて。死ぬんじゃないかなと思ってました。(苦笑)
――それぐらい!
チャン もういい、関わらないほうがいいなと思ったら、治ってそうだったから、よかったねって。
――そんな呑気な話(笑)。でも実際、そう思ってもしょうがないぐらいの状況でしたよね。いまでこそ笑い話にできますけど、あの時期ホントにヤバかったじゃないですか。
チャン ヤバかったですね。
――アイドル業界でも、あそこまでのことってまずないレベルでしたよ。
チャン でも、意外とそれがわかんない人多くて。
――ガチだってことがですか?
チャン ガチなこともわかんないみたいで、私にすごいバッシングきましたもん、「なんで助けてあげないんだ!」みたいな。
――ここまできたら無理ですよっていう。
チャン そうそうそう!「私、まだ高校生なんでやめてください。こっちに責任押しつけないでください」みたいなのはありましたね、あのときは。
――メンヘラアイドルのかまってちゃん的なものとは全然違いましたからね。
チャン 違う。私はメンヘラでもなんでもないし。
――運営側がメンヘラっていう。
チャン でも、そのときはお世話になりました。
――当時、サクライさんがかなりヤバそうだっていうんで、ボクが大阪でイベントやるときに「近所だから遊びに来ませんか?」って誘ったりして。
チャン よかったです。ホントにありがとうございました。すごい助けられたなと思いました。ただ、私は完全ノータッチでいこうと思って。
――世の中、何がプラスになるかわからないと思ったのが、ボクがいずこねこ&サクライさんと最初に共演したとき(2012年10月20日、大阪シアターセブン『吉田豪のアイドル伝説』Vol.2)から、ずっとサクライさんのことを「ロリコンだけど才能ある」っていじり方をしてたじゃないですか。あれを大森靖子さんが気に入って、「あのフレーズを宣伝材料にしてサクライケンタを売り出したい」って言ってて、実際いまそうなりつつあるじゃないですか。
チャン たしかに。ホントによかったです。 そう思えるのは、いまお互いがうまくいってるからこそだと思いますね。プラニメのときはめっちゃケンカしてましたけど。たぶん私が先にバーッといってて、向こうはそれができてなかったじゃないですか。私らがプラニメで出たイベントに向こうが初披露で出てて、バチバチみたいなのもありましたけど。いまは夏の魔物も順調だし向こうも順調だしで、お互い順調でよかったね、みたいな。
――サクライさんもエール送ったりしてますからね。「いまの夏の魔物はメンバーのバランスもいいし、もっと売れていい」とか言うようになって。
チャン いや、たぶんあれは仲直りしましょうっていうアピールだと思ってますよ。(笑)
――ボクもそうだろうと思いながら、わざと拡散してたんで すけどね。
チャン まあ、よくなりましたね。(笑)
――ホントよかったです!
チャン ありがとうございます(笑)。
――自分のなかではどのくらいから好転した感じだと思います?
チャン 夏の魔物が決まったぐらいだと思います。それまで一切連絡も取らないし、取り方もない状態だったし、映画撮影してるときは第三者が絡んでたんで、直接やり取りしてなかったんですよ。それが今年、おおさかシネマフェスティバルで賞をもらって、そのときふたりで壇上に上がって、意味わかんないと思って(笑)。でも、あの映画は結果的にはよかったなと思いましたね。夏の魔物に入って、そこから半年後、11月の自分の誕生日あたりぐらいかな? 何かのきっかけで許可を取らなきゃいけないみたいなことがあって、第三者を挟むのが面倒くさいからLINEしようと思って。それがきっかけで、「誕生日ありますね」「じゃあ夏の魔物、観に来ますか?」って、夏の魔物を観に来たのが何年かぶりで、そこからですね、連絡を取るようになったのは。
――大阪のロフトプラスワンにサクライさんが出て、ギター弾いて一緒に歌ったのってそのあとぐらい?
チャン それは2月22日にいずこねこのライブ映像を観よう、みたいな企画で。いつも自主計画でひとりでやってたんですけど、これきっかけで出たらおもろいかなって……ずっと対バンNGだったんで。
――周りも気を遣いますからね。
チャン 私が出たいイベントに向こうが出てて、こっちが呼ばれなくてチッと思ってたら、向こうが気を遣って「大丈夫だったんですか?大丈夫だったら誘ってました」みたいに言われることがよくあったんですよ。これ面倒くさいなと思って、じゃあ私のイベントに出たら和解した感じが出るかなと思って、「出てくださいよ」みたいな感じで出てもらって。それでみんなも「ああ、大丈夫なんだ」ってことで対バンが増えたというか、話題づくりで何回か一緒にされましたけど、でもいまは全然違うし。
――すごいセンチメンタルな気持ちで『世界の終わりのいずこねこ』サントラ聴いてましたよ、これがいずこねこ最後の曲なんだなとか思いながら。
チャン ホントですか? 私なんとも思わなかったです(笑)。
――えー!
チャン いつもなんとも思わない(笑)。私はちょっとメンタルが強すぎましたね。
――でも、初めてのちゃんとしたアイドル活動のいずこねこがそれだけたいへんなことになり、プラニメも結構たいへんなことになり。
チャン いや、私はプラニメ全然たいへんなことだとは思ってなくて。ただ単に私が大阪にいるっていうことと、自分がやりたいことをうまく実現できなくて、それがもどかしくて。
――コミュニケーションが取れてなかったとは言ってましたよね。
チャン どう取っていいのかわかんなかったんですよね。私はすごい楽しくやってたし、すごくいい経験させてもらったと思ってて。私、ずっと人ん家に泊まれなかったんですよ。小さい頃から人の家に泊まるのが嫌いで。
――もう直ったんですか?
チャン サキちゃんの家に泊まるようになってやっと 。だからすごいお世話になったし、いい思い出なんですけど、ただ大阪に住んで、大阪の大学に行きながら東京に通ってたんで、せっかくチャンスをいっぱいもらってるのに全然うまく実現できないことがもどかしくて。もしかしたら私がいまやりたいことはこういうことじゃないのかもしれないと思って。たぶん自分に対してちょっと落ちてたのかもしれないですね。いままでうまくいきすぎてたっていうのもあって。やっぱり自分の力じゃ何もできないんやなっていうのを感じて、それでちょっと考えちゃって。
――プラニメを抜けよう、と。
チャン そうですね。そのときTIFとかも出たかったし、いろいろ目標はあったんですけど、CDを出しても売れないし、毎作セールスを上げていかなきゃいけないじゃ ないですか。その上がっていく未来が見えなくて。で、新メンバー入れるかもしれないって話になったときに、新メンバーに対して自分のやりたいことをちゃんと伝えられるのかって思ったときに、これちょっと無理かもしれないって。
――ふたりでも難しいのに。
チャン そうですそうです。だからこれは1回考え直したいなと思って。ズルズル5年とかやって「やっぱり無理でした」ってなるよりも、早いうちに自分がやりたいことをもう一回まとめ直してリスタートしたいなって思って辞めたんで、べつに揉めたわけでもなんでもなかったんで。
――自分のなかでマイナスなイメージはない。
チャン 全然ないですね。ただ、いずこねこのことがめっちゃ好きっていう人と、プラニメから見てくれて私のことを知ってくれてた人とがバチバチしたりして。私が中心となってソロのほうがいいんじゃないかとか言われることもいっぱいあったし、でもプラニメで頑張ってほしいみたいに言われることもあって、どうしたらいいんやろう、みたいな。じゃあ全部できることしたろってことで、フリーになって何をやっても怒られない環境を作ろうと思って。
――言っちゃえば2回連続で失敗したって言えるような状態だったわけじゃないですか。そこで評判の悪い成田大致の誘いによく乗ったなと思うんですよ(笑)。
チャン そうですよね(笑)。
――あの段階では夏の魔物という船がいつ沈んでもおかしくなかったわけで。
チャン だから最初、謎のキャラクターのまま加入する ってなったときも、それは私も周りから言われて。
――「どうもあの人、人間関係のトラブルが多いらしいぞ」みたいな。
チャン ははは(笑)まあ、「大丈夫なのか?」とか「プラニメ辞めてなんで?」とかめっちゃ言われたんですよ。プラニメ始めるときも言われたんですけど。「ソロじゃないんや」とか。
――いずこねこがよすぎたんですよね。
チャン まあ、あまりにも伝説化されてしまったじゃないですか。だから何やっても言われる状況に慣れてしまったところもあって、夏の魔物で言われることに関しては何も思わなかったんですよね。でも若干、いずこねこのファンとかプラニメのファンの気持ちを考えて、覆面というかたちを取って。
――あ、そういうことだったんですか。
チャン そうですそうです。 私が自分でどうしたらいいかなっていうことを考えた結果、夏の魔物にもともと覆面キャラがいたっていうのもあって、その方がいなくなったから、じゃあ私、覆面イケると思って。そのキャラを私がやればいいんじゃないか、みたいな。
――正直、最初気づかなかったですもん。何ごともなかったかのようにケンドー・カシンのマスクの人の中身が入れ替わってて。
チャン それがよかったんですよ、最初は。
――なんとなく中身が変わって、素顔も出せなくて、絶対に不満だろうなと思ってたんですけど。あまり前にも出ないポジションだから、そんなに自己表現もできないしモヤモヤするんだろうなって。
チャン いや、私が覆面したいっていうことで、名前も替えて、私じゃないって存在で入れさせてくださいっていうのをメールで伝えて始まったんで。そのとき自分でやりたいことがあったんですよ。ソロでもう一回どれだけできるかも試したかったし、でも「あの子はグループよりソロや」って言われてるのが若干嫌で。グループでもできるやろって。一匹狼だと思われてるのかなって思って。
――「協調性がないからひとりでしかできないんだよ」みたいな。
チャン そう! だから、「違う! キャラだって私にもあるよ!」って、それはちょっと意地でグループだってやるっていう気持ちで入ったし。だから最初は自分自身を隠してどれだけお客さんに見てもらえるかなっていう気持ちもあって、覆面で名前を替えて、まったく違う自分としてやってたんですけど、なんか知らないけど最初からバレてて。
――どこかのライブハウスで「いずこねこが夏の魔物に入るらしい」って誰かが話してたってツイートが拡散された事件がありましたよね。
チャン なんかありましたよね。プラニメもPOPに変わるメンバーとかブクガのメンバーとか全員バラされて、あのなかに私も混ざってて。「茉里ちゃんが夏の魔物に入る。残念」とか書かれてて。その「残念」のひと言で、一気に残念感が広がっちゃって。「いや、待って!いいことやから!」って。「やったー」みたいに書かれてたらちょっとイメージ変わってたのに、「残念」って書かれたせいで、みんな残念って気持ちになっちゃって。だからスタートがすごい悪かったがゆえに、自分は頑張ろうって逆に思えて。覆面でもあの子すごいって思われるぐらいにならんと、たぶん今後はないなと思って。ネームバリューだけでやってても今後はないやろう、実力がちゃんとつけばいいかなっていう気持ちもあって。
――それまで夏の魔物にはどんな印象があったんですか?
チャン 何やってるグループかよくわかってなくて。ただフェスのイメージですね。いずこねこが2013年に出たフェスのイメージ。
――ああ、あのときのちゃんと仕切れない夏フェスの運営の人か、と(笑)。
チャン なぜかフェスの主催者なのに前に出てこないユニットというか、顔も知らかったです。実は。
――それぐらいの感じだったんですか。
チャン そうなんですよ。ネコフェスとかでも共演してるんですけど、どれが主催者の人なのかわかんないし、プロレスラーの人と、あとすっごいグラマーな女子が畳の上でドワーッとしてて、これが夏の魔物かと思って。ライブもちょっと観たら寸劇みたいのやってて、何やってんやろって。「え、歌ってた?」みたいな印象しかなかったんですけど。ただ、夏の魔物のフェスにはいい思い出しかなかったんで。ただ楽曲をもらったとき、いい曲しかないなと思って。これでライブできるんやったら楽しいやろうなって。
――マスクを被って、それまでの自分じゃない存在としてライブやってみての感想は?
チャン 楽しかったです。「え、誰?」みたいに思われてるのも、私は表情でライブの印象を持ってもらうことが多かったから、その一番の武器がない状態でやってるのは、ホントに違う自分になれた感じで。いままでニャンニャン言ったりとかバッキバキに踊ったりしてアピールしてたんですけど、動きと声でしかアピールできないから、自分を忘れられるパフォーマンスができて、まったくライブの感じが違くて、これはおもしろいなっていうのはありましたね。覆面ってすごいなって。ライブしてるときはまったく自分やと思ってなかったです。
――実際、入ってみてグループはどうでした?
チャン よかったです。
――タイミングもよかったんでしょうね、いい感じになってきた時期に入ったから。
チャン それもあると思うんですけど、でも最初に入ったときは不安でしたよ。まず楽屋の感じとか。
――まだピリッとしていた。
チャン なんか、そういう残り香みたいなのを感じたっていうか。言うたら異色じゃないですか。誰ひとり似てる人がいないっていうか、同じ業界の人がまったくいない状態で、共演する人もいままで共演したことない人ばっかりで、すっごい迷い込んだ感じで、最初は不安しかなくて。しかもそのとき自分のソロを始めたんですよ。6月に入って9月に始めて。ホントはソロをしっかり発表してから次の活動を、こんなこともやります、あんなこともやりますって言いたかったんですけど、その前に加入して、ソロ発表までは私もモヤモヤした状態でやってたんで、誰もピンとこなかったというか、「ああ、また新しい人が入ったんやろうな」ぐらいに思われてるんやろうなって。
――「どうせすぐ辞めるんだろうな」みたいな。
チャン しかもイベントには全然来ないし、取材もラジオも全然いないし。
――それは距離の問題で?
チャン 距離です。大阪に住んでるから、ライブのときにうしろで覆面のにぎやかしでいるぐらいの感じだったんですけど。
――大阪から通いで来て、うしろでにぎやかしをしてるだけなのって結構切ない気がするんですけど、そうでもなかったんですね。
チャン そうですね。私はうしろでやってるぐらいでいいか、みたいな。そういう自分もいたし、そう思われてるのかなって勝手に思ってて、それで不満にも思ってなくて。でもやっていくうちに、いままでの環境との違いにすごい感動して。
――どう違ったんですか?
チャン いままでは楽曲制作兼プロデューサーみたいな感じが多かったじゃないですか。それ以上のメジャーっていうのを1回も経験したことがなかったんで、これがメジャーなんやな、これは私にとって絶対プラスになるし、自分がやりたいことに合ってるんじゃないかってちょっとずつ思えてきて。それぐらいから夏の魔物の自分の居場所の作り方っていうのを変えていって。だから活動していくうちにどんどん印象が変わってきました。
――メジャーレーベルは全然違います?
チャン 最高ですね!いままで自分が動かなきゃいけない場面が多すぎて。しかも、なんやったら最初の3年とかは大人がしっかりしてないがゆえに自分だけがしっかりしてる状態みたいな環境をやらざるをえないみたいな状態だったから。
――プロデューサーがアーティスト体質だから、そうじゃない部分をケアして。
チャン そうな んですよ。だって、ライブハウスの廊下で爆睡しちゃったりとか。
――へ?
チャン すごい狭い廊下で障害物のように寝て、アイドルがその上を跨がなきゃいけないみたいな状態だったりして(笑)。
――それパンチラ見ようとしてるんじゃないですか?
チャン ホントにガチで寝てるんですよ。あと当時は関係者に対しての態度もひどいし、人の顔と名前を覚えない。
――そういうケアを全部しなきゃいけなかった。
チャン そうです。「挨拶、連絡はこうしましょう」とか、「イベントはここ出たほうがいい」とか「あれは出ないほうがいい」とか、スケジュール管理とか。「何時に出ましょう」とか言っても起きてないから迎えに行かなきゃいけないとか。
――プロデューサーのマネージャーみたいな感じですね。
チャン そうですそうです。こっちがおまえのために動いてやってんだ、みたいな。でも、いまは自分のために動いてくれてる人がいるじゃないですか、それがホントにすごいなーと思って。常々ありがたいなって。待ち合わせ時間も場所も連絡くるじゃないですか。自分で調べなくていいんだ、みたいな。
――ふつうなんですけど(笑)。苦労していると、そういうことが幸せに感じるわけですね。
チャン そうですね。最初は大阪から始めたっていうのもあって、お客さんがひとりしかいないとかもあったんですよ。いまデカいステージいっぱい出させてもらってるじゃないですか。ありがたいなって思いますね。
――いまはステージの幅も広いですもんね。AVのイベントで歌ったり。
チャン ありましたね(笑)。あんなボーンとスチーム出ることなんて経験したことないじゃないですか。「すげえ、スチーム出る!」みたいな。デカいモニター全面に自分が出てるとか、やることすべて自分の夢だったことが多すぎて、いままでなんやったんだろっていうぐらいに(笑)。
――いい下積みしましたよ。
チャン そう思います。だから、いままで自分がやりたかったけどできなかったことが、メジャーアーティストになるっていうのもそうですし、こういうステージで歌いたいとか、こういう感じでやりたいとかもどんどん夢が叶ってるし、ありがたいです。
――何もなくてこうなってたら調子に乗ってますからね。
チャン そうなんですよ。だからいままでの自分にもありがとうって思うんです。ホント頑張ったなって。
――素直に「サクライケンタありがとう」って言えるぐらい?
チャン いや、言えないです、それは(笑)。心の中では思ってますけど、表立っては言いたくないです。
――それ以上のひどい目に遭ってるから。
チャン ありがとうって思ってほしいです、ホントに。そこは正直にいきたいですね。
――音楽の才能はあるけども、それ以外が駄目すぎた。
チャン そうですね、楽曲はありがとうとは思ってますけど、それ以外は全部ありがとうと思ってくださいって思ってます。
――それを体験したら成田大致に問題あるとか思わないでしょうね。
チャン まったくないですね。むしろしっかりしてるなって思ってます。
――最近、夏の魔物関係の取材をやってて状況が変わったなと思うのが、昔は誰を取材しても、だいたい取材中に成田大致の悪口になってたんですよ。ほとんどカットになったりして殺伐としてたんですけど、最近それがなくなったんですよ。
チャン そうなんですか。私が入ってから1年ちょい経ちましたけど、私は成田さんの悪口とかないですね。
――ブラックDPGを取材しても成田大致の悪口が全然出なくてビックリしたんですよね。
チャン 私、そういうの読まないんですよ。あんまり人に興味なくて(笑)。人のインタビューとか人のブログとかあんまり読まないんですよね。見出しだけバーッと読む、みたいな。
――サクライさんのインタビューとか気にならなかったですか?
チャン 全然興味なかったです。ホントに読んだことなくて、マジで知らなくて。だから2年後、3年後に「へぇーっ」て聞くみたいな感じです。ホントに興味ないんですよね。心配したりとか、いま何してるのかなとか気になったりはしますけど、そこまで自分が細かくチェックしたりとかはないですね。自分のことしか興味ないです。エゴサとかはしますし、自分がどう思われてるんやろとか、自分いま大丈夫かなとかはめっちゃ気になって調べたりはしますけど。
――ボク、気になってしょうがないですよ。
チャン ホントですか? 
――エゴサも大好きですけど、他人のこともおもしろいじゃないですか。
チャン 他人は全然興味ないです。誰かと誰かがケンカしたとかやったらおもしろいですけど(笑)。
――たとえばボク、いずこねこ関係のスリリングな発言をツイッターでつぶやいたことありましたよね(「ツイッターに出てくるんですよ。『Maison book girlを聴いてやっぱりサクライ楽曲だなと思った。でもマリちゃんとサクライさんだから起こせた奇跡もある』みたいな。そういうツイートを見るとムッとしちゃう。いずこねこがめっちゃ好きだからこそ思い出したくないから『もう書かないで』って。私、『いずこねこ』って書かれるとうれしいんですけど、そこに『サクライさんが作った』とか『サクライ』が加わるとイラ~っとするんですよ(笑)」「(サクライさんが現在プロデュースしてるMaison book girlにはどんな印象を?)嫌だ。嫌い。メンバーが嫌いってわけじゃないんですよ。単純に『なんでそんなのうのうと新しいグループやってんの?』って思っちゃう。『こっちがどれだけつらい思いして数ヶ月間1人で活動してたと思ってんの?お前、なにしててん?その間』って思っちゃう。だからMaison book girlはとりあえず嫌いです。おそらくサクライさんもプラニメに対して『なんやねん』って思ってるだろうから、それでいいかなって」といった『IDOL AND READ』でのミズタマリ発言を拡散)。
チャン ああ、ありますあります! つぶやかれた! 
――ああいうのおもしろいじゃないですか。
チャン おもしろいですね(笑)。ただ、聞くのは興味ないんですよ。自分がどう思われてるかぐらいですね、聞くのは。
――東京に出てくるっていう考えはまだないんですか?大阪在住の弊害がずっとあったわけじゃないですか。
チャン そうなんです。結局ずっと東京で活動してるんですけど、なのにずっと大阪に住んでて。大阪にいるっていうことで越えられなかった壁っていうのがちょいちょいあって、それを5年経ってまとめると、すっごい損やったなって気づいてしまって。
――やっと気付いた! 
チャン いまは夏の魔物っていうグループがここまで来たっていう安心感から、学校もいままで結構頑張って通ってはいたんですけど、なるべくお休みするようにしてます。でも、大阪っていうイメージっていうのは大事にしたくて、将来的には新喜劇出たいし(笑)。
――ああ、そういう野望が(笑)。
チャン そうなんです。MBSでラジオやってたっていうのもあって、もう一回ラジオとか戻りたいし、関西圏の『ちちんぷいぷい』とか『せやねん!』とかのゲストにも呼ばれたいしっていう、結局地元が好きっていう気持ちから、完全にこっちに移動はしたくなくて。
――ボク、上沼恵美子さんの番組のレギュラーでしたよ、2年ぐらい 。
チャン すごい!なんですか?
――高田純次さんとの『クギヅケ!』っていう読売テレビの番組です。
チャン えーっ!観たことあります。私も『怪傑えみちやんねる』とか出たい!上沼さんとしゃべりたいです!
――最高でしたよ、オフレコトークが。突然「カメラ止めて」って言って実名で「こいつの性格が最悪!」とか言い始めたりとか。
チャン えーっ、絶対楽しい!めっちゃうらやましい!
――そういう野望があるんですね。
チャン ありますあります!子供の頃から結婚したら絶対『新婚さんいらっしゃい!』は出るんやろうなって思ってたし、そういうのもあって最終的に大きくなったら大阪にボーンと貢献できたらいいなって思えるようになって。
―― もうケンドー・チャンにはなりきれてます?
チャン そうですね。もともとキャラ設定がすごくブレブレ……途中からナタリーで正体を発表したり、謎のままのはずだったのに、なんで覆面してんやろ、みたいな感じだったんですよ。そのときは「ああ発表しちゃった……でもケンドー・チャンやし、ライブあんまり行かれへんし、行ったら行ったでどうしたらいいかわからん」みたいなのが続いたんですけど、夏の魔物のグループに対しての印象がよくなるにつれ、自分のキャラの位置も自分なりに探して、このブレたキャラ設定も、結果よくしていこう、みたいな。ちょっとずつ時が経てば笑い話になればいいかな、みたいな気持ちになりました。
――人間関係はうまいほうなんですか?
チャン どうやろ?私たぶん昔からそうなんですけど、この子とは仲良くできひんなと思ったら自分なりの対処でこじれないようにうまく距離を取ったり、自分がつらくならないように避けたりはできるタイプなんで。だからケンカとかも基本しないですし。怒ることはありますけど。
――ケンカしたのはサクライさんぐらいですか?
チャン そうですね。あんなにキレたの人生であの人ぐらいちゃうかなと思いますもん。声が枯れるぐらい、体が痛くなるぐらいワーッと怒ったのは人生で初めてちゃうかな。それ以外べつに何もないですね。
――いま思い出してもスリリングでしたよ。サクライさん自殺未遂&警察出動の、あんなタイミングでラジオの生放送をやってたのとか。
チャン そうです、やりましたやりました!でも、全然何も言ってなかったですよね。
――サクライさんがラジオを聴いてるとはつぶやいてたけど。
チャン それも全然興味なかったですね。自分に被害があるときはむっちゃ言ってましたけど、自分にまったく被害がない場合はふーんってしてましたし。
――強いですよね。よっぽどの経験なはずですけど。
チャン いや、あのときは自分、殺されるんちゃうかなと思って怖かったですもん。それで私は、それぐらい恐怖だし、そんなに周りに迷惑かけるんやったら死んでまえって思ってたんですよ。そしたらお客さんから「ひどい!」とか「茉里ちゃん最低!かばってあげてよ!」みたいに言われて。
――「向こうは大人!こっちは子供!」って言いたくなりますよね。
チャン そうそう!それ思ったけど、こいつらは全員向こう側や、向こう側はもういらんって切り替えて、「はい終わり!」みたいな感じで。
――自分はそんなに精神的なダメージは受けずに済んだんですか?
チャン 受けましたけどね。そのときすごい病気もしましたし。表には出せなかったけどいろんな病気したし、メンタルからいろんなものきたけど、でもそれを表に出すほど私はメンタル弱くない、みたいな(笑)。でも、いまは結構助かってますよ、何が起こっても大丈夫、みたいな。
――あの経験をすれば、だいたいのことは大丈夫ってなりますよね。
チャン そうです。いまどんなこと言われても大丈夫ですね。どんだけディスられても大丈夫です。
――「夏の魔物なんか入ったら大変だよ」って言われても。
チャン 全然大丈夫!人間関係ぐらいじゃ絶対大丈夫だわって思うし、あれ以上のことは起きひんからっていう気持ちだったんで。夏の魔物やらせてもらって1年経って、めっちゃよくなったじゃないですか。「どや!」みたいな気持ちですね。
――いつ沈んでもおかしくない船が新大陸を発見したような。
チャン 今日もアルバムの宣伝周りしてたんですけど、すっごい自信を持って「夏の魔物です」って思えるようになったんやなって。タワレコとか行くじゃないですか。店員さんとかみんな覚えてくれてるんですよ。「いずこねこもプラニメもお世話になりました。夏の魔物も聴いてるんで頑張ってください」ってさっきも言ってもらって、すごいうれしかったですね。だから何があっても続けることは大事やなって思いました。
――ボクも素直によかったと思えますよ。
チャン 吉田豪さんから「よかったですね」って言われるのはヤバいなって思います。「大丈夫ですか?」しか言われたことないんで。
――毎回そうでしたね。目が合うなり「大丈夫ですか?」って聞くっていう。
チャン 「大丈夫……ではないんですけど、まあ私は大丈夫です」しか言ったことないんで。
――お互い探り探り会話してましたからね。
チャン そうなんですよ。本音で話していいのかな、みたいな感じだったんでよかったです。大人にもなりましたし。だいぶ考え方も緩やかになって。
――サクライさんとも和解して絡めるようになって。
チャン 和解したつもりはないんですけどね。
――え!
チャン 和解したつもりはないですけど(笑)。でも、この1年、夏の魔物に助けられたなっていうのは思いました。
――いい話じゃないですか。
チャン いい話ですよ(笑)。
――初めていい状態のときに来ちゃいましたよ。
チャン 初めていい話ができた!……それっておもしろくないですか?
――多少の波風を期待してる部分はありますね(笑)。
チャン なんもなかったですね(笑)。
――ボクがいずこねこ〜ミズタマリ〜ケンドー・チャン絡みのことをリツイートしたのって、たぶんサクライさんと一緒にロフトプラスワンWESTに出たぐらいが最後ですよ。
チャン それ以降ないかもしれないですね。次はあいつが犯罪を 起こすぐらいのときを期待してます(笑)。
――そっち!サクライさんも、いまはだいぶ安定してますからね。
チャン だからあんまりおもしろくないですね(笑)。怒れないし。まともになってしまったと思って。
――ちょっと寂しい部分もあるんですか?
チャン 寂しいですね、まともすぎておもしろくないなと思って。
――これくらい触れづらい話題しかなかった人たちがこうなるのって、ホントに人生おもしろいですね。
チャン よかったです、5年経つといろいろありますね。だって『最後の猫工場』が初めて出したプレス盤のCDで、それがアルバムやったんですけど、それ以来のアルバムだから5年ぶり。
――そうか、プラニメはアルバムまでは持たなかったわけですね。
チャン そうです。いまやっとアルバムまでいったんで、ここまできたかと思いましたね。自分の人生濃いなって振り返って思いましたね。いまは超平和です!